歯の神経の大切さ
歯の神経(歯髄)を取った後には、様々なトラブルが起こりやすくなります。 歯髄には血管や神経などが通っていて、痛みを感じ危険を知らせてくれるだけでなく、栄養補給や抵抗力を維持するといった役割があります。虫歯が大きく止むを得ず神経を取った歯は、これらの大切な機能が働かなくなり、次第にもろくなってしまいます。根管治療(神経を取る治療)の有無で歯の予後を調査した報告によると、根管治療を行ったことのある歯は、根管治療を行っていない歯と比較して、歯の喪失リスクが前歯で1.8倍、奥歯で7.4倍になることが報告されており(経過観察8年)、これは驚くべき数字です。歯の寿命という観点からすると、いかに歯髄の保存が重要かが分かります。当院は、虫歯が重症であっても、まずは神経を残す努力をする事をお勧めしています。(熱いものがとてもしみる、何もしていなくてもズキズキ痛むなどの自覚症状がすでにある場合は、炎症が強いため神経を取る処置を行った方がいいこともあります)。しかしまずは、すぐに歯の神経を取るのではなく、歯の神経を残す努力をする、これが歯を長持ちさせることに繋がっていくのです。
MTAセメントで神経を残す治療
虫歯が大きくて歯の中を通る神経まで達してしまった場合、通常であれば神経を取る処置が必要になります。しかし前述した通り、神経を取ると歯の寿命は大幅に短くなってしまう可能性があります。そこで当院では、神経をできる限り残すためにMTAセメントという神経を保護する薬剤を使用した神経保存療法を行っております。虫歯の進行した部分までをキレイに取り除き、神経の表面にMTAセメントと呼ばれるフタをすることによって、神経の生活反応を残したまま保存する方法です。MTAセメントには、殺菌作用、神経表面に保護組織を形成する、歯を丈夫にするなどの働きがあります。しかし、MTAセメントは万能ではありません。MTAセメントによる治療が可能かどうかは、虫歯を取り除いてみないと分からないこともあります。ですから、MTAセメントによる治療をご希望されても、虫歯を取りきった際に神経を残すことが出来ないということも可能性としてあることをご理解頂く必要があります。とはいえ、歯の生活反応を残せるチャンスがあるのであれば、MTAセメントをご提案することがございます。しっかり説明を聞いた上で、歯の神経を残したいと思われた際にご決断下さい。